コメ不足が問題になっています。やっと備蓄米が放出されて、価格低下への期待が高まっていますが、根本的には生産量が足りないのではないでしょうか。
生きていくのに必要不可欠な食を支える、農業の重要さを感じる今日この頃です。

さて、ここに一冊の本があります。
『2020年農業が輝く』
相馬 曉 著
2004年刊行

著者の相馬さんは、北海道で活躍され、農業のあり方に警鐘を鳴らし、環境にも配慮したクリーン農業を提唱してきた方です。「野菜博士」と呼ばれ、ユーモアあふれる分かりやすい話術で、メディアにも多数出演され、農業の大切さ、課題を解説されていました。
北海道立農業試験場に勤務後、深川市の拓殖大学北海道短期大学教授となり、積極的に新規就農希望者の支援にも取り組んだ経歴を持っています。
しかし、残念ながら刊行後の2005年に鬼籍には入られました。
著者の考えを非常に興味深く思い、その当時、著書を購入していました。
今改めて見返してみると、その本の中に、このような記述があります。
私は、私のゼミ生に「20年後、ススキノで一番持てるのはお前たち、農家だ」と言い続けている。(P.8)
2020年には世界的な食糧危機がやってくる。少なくても穀物需要は切迫し、各国、各地域で農業を見直さざるを得なくなる。2020年、間違いなく農業が輝く時代がやってくる。だから農業は未来産業だ。(P.10)
大変ユニークな語り口ながら、まさに、今の時代を予言している書だと思います。
国内のコメ不足だけではありません。世界的な人口増加により需要が増え、またロシアによるウクライナ侵攻などの世界情勢により、輸入に頼るさまざまな食糧の価格高騰が、まさに起きています。
食糧の安全保障の観点からも、国内農業の重要さが見直されるのは間違いありません。
まだまだ農家さんには、労働に見合う恩恵が十分に行き渡っていないと思いますが、記述通り、農家さんは尊敬される、モテる、そんな時代になってきたことを感じます。

なお、著書の中では「2020年に」という表現を使っていますが、次のことを考えると、あながち外れていないと思います。
- 著書の中で「20年後」とも言っており、刊行年の2004年から20年後は、2024年で合致する
- 2020年に想定外のコロナ渦がはじまり、経済活動にしばらく制限がかかったため、少し遅れた
コメ余りの時代の20年前にこのような考えをしっかり持っていらっしゃったことは慧眼であり、感服します。
本当に素晴らしい方を早く失ったと感じます。
もう少し長生きをされていたら、相馬さんの影響で、もっと農業を志す若者が増えて、日本の農業はもう少し違ったかもしれません・・・