はじめに
北海道の北部、日本海に面する幌延町浜里地区に、まるで巨大な風車の隊列のように並ぶ「オトンルイ風力発電所」があります。
28基の大型風車が南北3.1kmにわたり一直線に並ぶ光景は、まさに北海道の広大な自然と再生可能エネルギーが調和した象徴とも言える風景です。

今、この発電所が大規模なリプレース(設備更新)計画に向けて動き始めています。
本記事では、写真映えスポットとしても人気のこの発電所がどうなってしまうのか、確認してみたいと思います。
オトンルイ風力発電所について
「オトンルイ風力発電所」は、風況に恵まれた日本海沿いの幌延町浜里地区に建設された大規模風力発電施設です。「オトンルイ(音類)」は、アイヌ語で「浜にある路」を意味します。
天塩町の市街地から道道106号線(通称「抜海(ばっかい)線」)を車で15分ほど北上したところにあります。日本海沿いを走る、小樽から稚内に続く「オロロンライン」の最北端に位置する道路沿いにあり、好天時には利尻富士(利尻山)も望める絶景のロケーションです。
2003年9月より運転を開始し、28基の大型風力発電機が稼働しています。各風車の発電容量は750kWで、最大出力は21,000kW(750kW × 28基)、年間発電量は一般の家庭が1年間に消費する電力の約12,000世帯分に相当します。
最大の特徴は、海岸線に平行して一直線に約3.1kmにわたって整然と並ぶ風車群です。ローター直径約50.5m、支柱高さが74mの大型風車が並ぶ風景は圧巻です。
現地では、周囲に建物や目印になるものが何もないせいか、数字が示すほど大きいとは感じませんでした。しかし、こうして改めてその大きさを知ると、「まさかここまでとは…」と、ただただ驚くばかりです。広々とした場所だからこそ、スケール感が曖昧になってしまったのでしょう。
幸いに見に行った際は快晴で、海を挟んだ利尻富士とのコラボが秀逸でした。

リプレース(設備更新)計画の概要
現在、運転開始から20年以上経過した「オトンルイ風力発電所」では、設備の老朽化と技術革新に伴うリプレース(設備更新)計画が進行中です。
主な計画内容
- 現在稼働している750kWの全風車28基を撤去
- 4200kWの風車5基に建て替え
- 設置本数は少なくなるものの、総発電出力は現行(21,000kW)と同等に維持
- 環境影響評価(アセスメント)を実施し、騒音・景観・動植物環境などへの影響を十分に考慮した計画
周辺では、国内希少種に指定されているオジロワシやチュウヒなどの希少猛禽類の生息が確認されており、複数の営巣や繁殖も確認されています。既存の発電所では、オジロワシなどの鳥類が風車のブレードなどに衝突したとみられる死骸も確認されているとのことです。
今回のリプレース計画においては、こうしたバードストライクの発生状況を踏まえ、風力発電設備の配置などについて慎重に検討することが重要とされています。これらの環境への影響も総合的に考慮した上で、今回の計画が立案されたものと考えられます。
今後、現在の28基から5基に減ってしまい、風車の隊列数が少なくなってしまうのは、何とも残念ですが、あくまでも観光のためではなく発電のための施設なので、やむを得ないですね。

リプレース(設備更新)時期について
理由はわかりませんが、当初2023年3月に停止して4月から解体予定でしたが、2025年3月に延期、その後さらに2027年3月に延期されました。
- 当初 2023年3月に停止予定
- 第1回変更後 2025年3月に停止予定
- 第2回変更後 2027年3月に停止予定
あの風車群を見納める期間が延びたのは朗報ですが、近いうちに見れなくなるのは間違いありません。
オトンルイ風力発電所 リプレース事業延期について - 幌延風力発電株式会社
今後の展望とまとめ
「オトンルイ風力発電所」は、再生可能エネルギーの普及を担ってきた重要な施設です。今後のリプレース計画により、より少ない風車本数で同等の発電能力を持つ最新鋭の設備へと生まれ変わることで、環境への負荷を抑えつつ、持続可能なエネルギー供給体制の構築が期待されます。
リプレース前の2027年3月までに行って、ぜひ「雄大な自然の中に建つ壮大な風車群」を見納めましょう!
